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今朝、8/16に発売するピアノCDが届いた。遂に。
嬉しいものだ。なんだか1stの時とは違った歓びだ。思えば1stの時なんて、嬉しさというより、怖い気持ちの方が大きかったかもしれない。自分を人に差し出すような、もう煮るなり焼くなり好きにしてください!的な気持ちだった。
今回は私の宝物を人と分かち合えるような、嬉しさがある。

今日から埼玉泊、3日間東京でライブなので、サンプルを4、5枚もって長野を出た。
途中、息子がトイレに行きたいというので、パーキングで止まって休憩。トイレの側のテーブルに腰掛けて待っていると向こうから歩いて来た男の方とふと目が合った。小沢征爾さんだった。
思わず立ち上がってしまったが、声かけれず、呆然と見送ってしまった。

私 の父は音楽が大好きで、父が朝から大音量でかけるレコードを聴いて私は育った。いろんな音楽を聴いていたけれど、大半がクラシックで、ルービンシュタイン もブーニンも内田光子もベルリンフィルも武満徹も父の聴く大音量のレコードで聴いた。その中にもちろん小沢征爾さんの振るオケもあった。
父は一度指揮者になりたいと思ったことがあったらしい。意を決して親に告白したが、即却下。長男だったし、家を飛び出してという発想もなく、呑み込んだ想いだった様だ。

そんな父が、私が音大の受験をすると息巻いてみたものの、オーボエでくすぶっていたころに、小沢征爾さんの「ボクの音楽武者修行」という本をくれた。
小 沢征爾さんの小さな頃、家にピアノを人力車に乗せて運んだ話から、ヨーロッパの指揮者のコンクールに出ると言って、船でヨーロッパに渡るのだけど、どこか のバイクのメーカーに協賛を得て、バイクの後ろに旗を立てて、広告しながらヨーロッパを廻るという話、指揮者のコンクールで優勝する話、世界の指揮者たち と出会って行く話、どれも破天荒で、もの凄く興奮して、勇気をもらった。
そ のころ世の中はレコードからCDに移り変わる時期で、近所のレンタルレコード屋からもレコードが追いやられCDばかりが並ぶようになった。私も部屋にCD とカセットテープの聴ける小さなシステムを導入していて、小沢征爾さんのCDを買って聴きはじめた。いろいろ買い集めたが、一番打ち震えたのはサイトウキ ネンオーケストラのブラームスの交響曲だった。どのオケとも違うエナジーがある。何か真ん中に皆が共通に持つ柱のようなものがあって、魂がそれに共鳴して ぶるぶる震えているような。
くすぶっている私を随分と後押ししてくれたのが小沢征爾さんである。
いつか、生で聴きたいなあと思いながら結局今の今まで一度も生で小沢征爾さんの指揮するオケを聴いたことはない。

松本も遠い場所と思っていたが、数年前から車を走らせれば一時間で付く場所になった。だけれどサイトウキネンのチケットなんて取れないのだ。知り合いに頼んでみたが無理。並んで並んで、並んでも取れるかわからない。。
先日、体調不良のため活動休止のニュースを聴いて、
もう聴くことはできないのかもしれない。。とどこかで諦めていた。

そんな想いが、立ち尽くして呆然とする私の中で渦巻いていた。
息子が駆け込んでいったトイレに小沢さんも入っていき、息子が駆け出して来たトイレから小沢さんは出て来た。もう一度目が合ったので、
「小沢征爾さんですか」
と思いきって話しかけました。
「そうですよ」
とくったくない笑顔、まるでおごりのない仕草、そして強くて真っ直ぐな瞳。
最近の体調のことも少し話してくださいました。結局休まずやっちゃうからだめなんだ、さすがに8月は休めと言われた。9月には振るよというお話しでした。
声は強くて、エネルギーに溢れていました。そのエネルギーが、無邪気で、やさしくて、まっすぐで、やんちゃで。。。私が小沢さんの奏でる音楽からもらったものそのものだった。

絶対、見に行かないかん、本当にまだまだ元気でいてほしい!
こころの底からそう思う。応援する!

頑張ってください。
そう言って別れたのだが、興奮は覚めやらず、うろうろし、そうだ、今朝方できた私のピアノのCDが鞄の中に入っているではないかということを思い出した。
急いで取りに行き、走った。

小沢さんを呼び止め、spannkosmo-pianoを渡しました。
「これは何と読むのですか?」
「スパンコスモです。私スパン子という名前で演奏してます。」
「スパン子さん。。。。?」

何を話したのかあんまり覚えてないけれど、勢いで渡してしまった。
聴いてほしいというか、私の応援届けという気持ちが大きかった。

車に乗って落ち着いたらちょっと怖くなってきてしまった。
世界一流の音楽を生み出している小沢さんに聴かせられるものなのか。
だから改めて聴いてみた。
渡してよかったなと思った。
小沢さん、聴いてくれるといいな。

2nd album のサンプル渡した第一号は小沢征爾さん。
私の心の師に渡すことが出来て、嬉しいです。