2011年8月

ひとなつの恋

宮城の杜氏さんが、今年作ったお酒「ひとなつの恋」。
ふわっとあつくて、さらっと消えてなくなる味だった。
花火のように盛って、音と残像が儚く、夜空に消えてゆく。
儚くって儚くって、愛おしい。

そんな素敵な素敵なものでした。

ありがとう!!

匂いが戻ってくる

久々に自分の尿の匂いを嗅いだ。
震災後に変化した尿の香り。

掃除の仕事を始めた頃、風邪を引き、
ある朝完全に鼻が詰まった。

バンガローの扉を開けると、
そこに泊まった人の香りと、気配とがどうしても残っていて、
ぶわっと吹き出してくる。
それを初めの頃はガードもせずに吸い込んでいたので、
鼻の奥が痛くなってしまった。

一棟一棟、違った気配と香りをニュートラルに戻す仕事。
油断すると私のようななんでも吸い込んでしまうタイプには初めはしんどい部分もあった。

そこで鼻が詰まった。
随分と楽になったこと。臭い臭いトイレもなんのその。
その代わり、鼻で感知するという感覚に蓋がされたので、
随分と鈍くなったし、ものの聴こえ方が変わってしまった。
片足が短くて目隠しした人間が歩いているような、
無骨な日々を過ごした。

今思うと長いトンネルをぶつかりながら歩いていたような日々。

ようやっと戻って来た。
山の匂い。虫の音。風の気配。
新しい朝を迎えた、そんな気分だ。

被災地

被災地へ行った。
震災からもうすぐ5ヶ月になるその場所は
きっとだいぶ整理もされ、
よく聞いていた臭いも殆どなく、
そして草花が覆いはじめていた。

そこに何があったか、どんな人がいたのか知らない私には
ただの荒れた空き地にしか映らなかった。

海の音が静かに響いていた。