台本が届いて、読み終わった時の嫌な感じだったこと。
救われない話、オチもどこかで聞いたことあるような。
9月はこの映画と付き合うのかあ。
前に映画の音楽を作った時も、その期間主人公の女の子になったような精神状態で、
それがゴムフェチの女の子の話だったものだから、
部屋に閉じこもって、そこだけは私の空間というどこにも行けないような、非常に内向きな私を過ごした覚えがある。

この映画と一ヶ月、覚悟。

『人狼ゲーム』
監督は熊坂出。
エンドロールの曲をピアノ一本でと言われた。
出くんが撮ったらきっとこの話もどうにかなっちゃうんだろうなあと思いながら、
とにかくこの台本を読み終えたときの感じが消えないうちに、ピアノを弾く。
映像を見る前に、このぼんやりしたこの感じで作ってしまいたい。
私がこの映画を見終わって、この気持ちを抱えてどうしたら歩いていこうと思うだろうか。
いや、走って走って、走り抜いてやりたい。
大声をあげて。
そうやって、これという音を探っていくうちに、曲の断片が出てくる。
そう、この感じとかもっとこんなギリギリに行きたいとか、そういう私の中の声で作る。
私の作曲はいつもそう。ピアノを触っているといつの間にかできている。

なんとなく断片が出そろった頃に、映像が届く。
見るのは一回。その感触で作りたい。
映像は本当に素晴らしかった。一度たりとも気がそれること無く、ずっと緊張感の中、心をやすられて、凄く辛いのに、すごく美しく、こんな話が、ちゃんと見終わったときにそれを抱えて歩いていけるようにできていた。
すごいなあ、出くん。
よし、私は、やっぱり駆け抜けてやれ!と思った。

曲が仕上がった。
タイトルは『呼んでる』

無機質な色 毎朝起きて違う気持ちなのに、同じように一日が始まり、
電車に揺られ、携帯片手に、時間はどんどん過ぎていく。
自分で歩いているのか、歩かされているのか。
気持ちは動いているのに、表面は淡々と無表情な、そんなところから始まりたかった。
そして、だんだん、動いてくる。何かが呼んでる、呼んでいる。鐘のような、どこかの誰かの声。音も無くはじける。今まで閉じこもっていたものが溢れ出す。ギリギリに、ギリギリまで、もっともっと、それを超えたら、走って、走って、走って!

人間はきっと、生きることにうんとタフで、何かに収まることなんて出来ない代物で、なおかつ脆い。
そんな絶望と希望を同時に感じられる映画だと思う。是非、見てほしいです。
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